脳神経外科医の生活 A daily life of the neurosurgeon

東海地方在住の脳神経外科医のブログです。I am a neurosurgeon and lives in Tokai region.

医者のアルバイト

今回は、医者のアルバイトについて少し語りたいと思います。

 

正直、医療関係者じゃない方だと、医者のアルバイトってあまりご存じないかと思います。

 

一昔前の話ですが、研修医がアルバイトをして生計を立てていたというのは、漫画のおかげで有名になりました。また、そのおかげで研修医の実態が周知され、制度としても大きく変わったのは記憶に新しいと思います。

 

昔は、研修医がまともに給料がもらえなかったため、代わりにアルバイトをしていました。当直だったり、外来だったりと様々です。

現在は、研修医のバイトは禁止となり、まともな給料が支払われております。

 

では、そのアルバイトはどうなったのか。

当然、現在もあります。医者の求人サイトにいけば、いっぱい見れます。

 

昔の相場は知りませんが、日勤帯の仕事であれば、時給1万円程度

当直帯の場合は、2000円〜5000円程度が相場になります。

相場がそれぐらいということは、当然それ以上のバイトもあり、非常に割が良い仕事となります。

 

中には、病院院内にいるだけで、1日10万円以上や、自宅待機(たまに呼ばれますが)だけで、1日12万円などもあります。もし、麻酔科専門医などさらに良い資格を持っていたら、1日数十万なんてざらな話です。

・・・正直金銭感覚がおかしくなります。

 

 

そういったアルバイト、どういった医者がやっているのでしょうか?

昔は研修医、現在は(多分昔も)、市中病院の医師です。

市民病院など独立行政法人の病院は、勤務医が準公務員扱いとなるため、原則アルバイトは禁止となります。そのため、私立系の病院の医師がアルバイトをしていることが多いと思います。

むしろ、本業よりもアルバイトにせいを出すドクターもいたり、そもそも本業を廃業して、フリーター医師になってしまう医師も増えているとか・・・。

 

 

公立病院で忙しく、汗水たらして働いて年収1000万(一般的には十分ですが)。

フリーター医師で、ちょっと当直バイトを掛け持ちするだけで年収2500万。アルバイトなので何の責任もありません。

当然、スキルアップが出来ない、保険の問題などフリーター医師の問題もありますが、お金だけを考えたら、フリーター医師が増えているのも頷けてしまう気もします。

 

 

 

それでは、診療は大丈夫なの??

救急に行って、バイト医師に診察されたけど大丈夫?と心配される患者さんがいるかもしれません(バイト医師は一般的ではなく、非常勤医師と言いますが)。

基本的には大丈夫です。当然、病院も変な医師に当直をさせては、評判が落ちてしまいます。そのため、バイトとして雇う医師には気を遣いますし、変な医師はクビになります。

また、バイト医師はそのことを知っているため、診療は真面目に行います。自分としては、患者さんに大きな不利益はないんじゃないかなと考えています。

 

 

少し、長くなりましたが、今回は医師のアルバイト事情について語ってみました。

また、当直で時間がある際にはちょくちょく更新していきたいと思います。

研修医の思い出

突然ですが、医龍って漫画読んだことありますか?

医龍の中で、研修医が偶然発砲現場に居合わせて、銃創の緊急処置をするシーンがあります。当然研修医は何も出来ず、上級医が来て適切な処置をするというシーンなんですが、、、。

 

その時の研修医の心理描写として、上級医に処置を任せることにより、自分の手から責任がなくなってホッとしている描写があります。

研修医を経験した人なら誰でも共感できるシーンだと思います。

 

 

自分は、田舎の三次救急病院で研修をしました。

研修医の一番の仕事は、各科をローテートすることでもなく、夜間や休日の救急外来を切り盛りすることです。田舎の病院であるため、研修医も少なく、月に7-10回ぐらい当直をしていました。

 

名目上は、上級医の指導の元で研修医は診察し、検査などを進めるとなっていますが、実際の現場では、ほぼ研修医の独壇場です。

自分で診察し、必要な検査を考え、実施する。その結果に基づいてどういった治療が必要か、明日まで様子を見れるのか、入院して緊急治療が必要なのかを判断します。

当然、最初は過剰検査となってしまったり、判断を間違えたりとトライアンドエラーをしながらERで研修医は成長していきます。

 

自分の研修先は、三次病院であったため、重症患者も運ばれてきました。

何らかの処置をすぐにしないと、数十分のうちに死んでしまうような患者です。そういった患者も研修医のみで対応せざる得ないことはありました。

重症患者を対応中に上級医がきてくれたときは、漫画の研修医のように、自分の手から命の責任が離れ、とてもホッとした覚えがあります。

 

重症患者の対応中は、一人の命が自分の手にかかっている状況となり、めまいに似た怖さをいつも感じていました。自分の次の処置が遅れると、目の前の人は死んでしまうかもしれない。とても恐ろしかったです。

今はもう、医者となって10年近く経ちました。救急当直をしていて、困ることもありませんし、ほとんどの症例に対応出来るようになりました。重症患者の対応についても、怖さは当然ありますが、冷静に対処出来ています。

 

ただ・・・前にも書きましたが、治療にはbetterはあっても正解はありません。

自分の判断が正しかったのかどうか、治療の現場では分かりません。分かるとしても数ヶ月後です。正解のない問題に対して自分なりの答えを出していくのが医療なのかなと思います。

脳外科は忙しい?

よく、脳外科医ですと言うと「忙しいんでしょ?」と言われることが多いです。

言われると大抵、「まぁ・・・」と言ってお茶を濁すことが多いです。

 

どうも一般的に脳外科医は忙しいという印象が強いようです。

確かに自分も学生時代はそう思っていました。

でも、脳外科医10年ぐらいやってきて言えることですが、特別忙しい科ではないと思います。今回は脳外科医の一週間についてつらつらと書いてみたいと思います。

 

脳外科医がいる病院は、救急の二次〜三次病院であることがほとんどです。

(二次〜三次病院は比較的重症患者を受け入れる病院です。)

常勤医として2-5人勤務が多いと思います。

 

まず、日常業務の一つとして病棟管理です。

入院患者さんの状態をチェックして、薬を処方したり、点滴を調整したり、傷口の処置をしたりします。入院患者さんの状態や人数にもよりますが2-3時間で終わります。

 

次に外来です。

自分はこれが一番嫌いなんですが、1週間に1-2日で外来業務があります。

外来で、定期的な検査を行ったり、薬の調整をしたりして患者さんを定期的に診察します。状態が安定後は基本的に近所の開業医さんにフォローをお願いすることが多いです(そうしなければ患者さんが増える一方となるため。)。

脳外科の外来はそれ程多くないので、昼過ぎぐらいで終わることが多いです。

 

もう一つは手術です。

手術は予定手術と緊急手術があります。

予定手術は、手術の曜日が決まっており、大抵、週1-2日で行うことが多いです。

緊急手術はいつ来るか分かりません。突然患者さんが運ばれてきて、手術となるため誰も予想は出来ません。

予定手術と緊急手術の割合は1:2程度で、緊急手術の方が多いのが脳外科の特徴です。

かかる時間も手術によって違いますが、基本的には3-4時間で終わることが多いです。

 

具体的にまとめてみますと、

月曜日:手術(朝から昼過ぎぐらいまで)、術後病棟業務

火曜日:病棟業務のみ

水曜日:外来日(昼過ぎぐらいまで)、その後病棟業務

木曜日:手術、病棟業務

金曜日:病棟業務のみ

土・日曜日:お休み

 

一般的なスケジュールです。

どうでしょうか。全然忙しくなさそうですね。週2日は午前中で業務が終わってしまいます。外来日もせいぜい昼の3時ぐらいには終わります。一般的な内科のDrと比べても患者数は少なく、外来患者の人数も少ないため、他科と比較してもそれほど忙しくないと思います。

 

緊急手術が多いため、忙しい印象があるのだと思います。

上記の予定の間に、緊急手術が入ります。週2-4回程度緊急手術が入ります。緊急手術が他科と比べて多いため、どうも忙しそうという印象があるみたいですね。

しかし、実際には全然「ヒマ」です(^^ゞ

よっぽど内科の先生の方が忙しいと思います。

 

まれに緊急手術が重なって忙しくなるときはありますが、そんなのは1-2日ぐらいしか続きません。その後はまたヒマな通常勤務です。呼び出されることが他科と比べて多いとは思いますが(緊急患者の割合が多いため)、日常的にはヒマな科なんです。

 

世間一般の印象と、実際の仕事量はちょっと乖離があるみたいですね。

以上、脳外科は実は忙しくないよというお話でした。

医者の結婚

医者はモテるという都市伝説があります。

自分も、男子校出身で鬱屈した青春時代を過ごし、大学に入ってからはぶっちゃけ良い思いが出来るんじゃないかと期待していました。

 

医学生はお金も時間もなく、全然モテません。

少なくとも自分はそうでした。

国家試験に受かり、医者になってからも、モテるなんて経験はしたことがありません。

 

当たり前のことですが、ほとんどの女性は、職業で付き合う相手を選んでいないです。最初のきっかけはあるかもしれませんが、そこから先に発展するかどうかは個人的な性格とかが重要になります。職業のみで付き合う!って特殊な方はほとんどいませんよね。

 

男も当然そうです。可愛いのみで付き合う訳ではなく、そこから先の、性格が合うとか趣味が合うとか至極当たり前のことでつきあいが始まると思うんです。

 

前置きが長くなりましたが、医者の結婚についてです。

医者の結婚のパターンは①学生時代の同級生②研修医中に出会った人との結婚が6割程度を占めると思います(丁度そのあたりが、付き合って数年後に結婚適齢期になるため)。

他の職業の友人と比べて、結構早く結婚することが多く、友人のほとんどが卒後3年以内(27-29歳程度)に結婚をしています。医者になる人は保守的な考えが多い(自分の意見ですが)ので、結婚による安定を早く得たいと思うのでしょうか。

 

残りの2割ぐらいの人は、仕事に生きる人です。

出会いがあったり、付き合ったりしても、相手よりも仕事を優先するため結婚は出来ないタイプです。そういったタイプは40代ぐらいになって、中堅的な立場になり仕事量が減った時に結婚することが多いです。結構びっくりする相手と結婚することがあります。とても若いレースクイーンさんだったり、患者さんの娘さんだったりとか。

 

女医さんの場合も同様です。

ほとんどが上記の①②に当てはまることが多いような気がします。

ただ、女医さんの方が離婚率が高い気がします。知っている女医さんの2-3割が離婚されているイメージです。ただ、日本の離婚率は3割程度と言われているので、世間一般的には平均的なのかもしれません。

 

まあ、つらつらと思いついたことを書きましたが、医者だからって何も特別なことはないってことですね。もう自分には必要ないですが、モテたい人は、肩書きではなく、自分の内面部分を頑張りましょうという話でした。

脳外科医は地獄行き

自分の上司が良く言っていました。

「俺たちは天国には行けないからなぁ」と。

色々な屍を超えてきた、上司ならではの言葉だと思いました。

 

 

自分が脳外科医を選んだのは、人の生死に直結する科だと思ったからです。

当然、内科や一般外科など、多くの科が直結するとは思います。

けれども脳外科医は、緊急で来た患者さん、くも膜下出血脳出血、重症頭部外傷などその場で処置をしなければすぐに亡くなってしまう患者を相手にすることが多いです。

 

そういった患者さんの治療が間に合って、状態が改善し退院されると、とても達成感があります。自分の手術で助けられることにやりがいを見い出し、脳神経外科を選びました。

 

しかし、当然、転帰が良い患者さんがいれば悪い患者さんもいます。

本当にドラマみたいなことを多々経験します。

例えば、

双子のお子さんが生まれたばかりの若い奥様に、「あなたの夫はもう助かりません。このまま心臓が止まるまで待つしかありません」と宣告したり・・・。

高校生の娘さんの父親に「あなたの娘はもう話したり手足を動かしたりするどころか、目覚めることもありません」と説明したり・・・。

 

一言一言、慎重に言葉を選びながら、残酷な説明をします。泣き崩れてしまう方もいれば、驚くほど静かに、無表情で受け止める方もいます。しかし、聞きたく無いだろう事実を伝えなければなりません。

 

緊急手術が必要な患者さんはさらに迷います。

自分の大切な人が、ある日突然倒れ、急いで病院に駆けつけたら、医師から「手術をすれば助かるかも。ただし命は助かっても寝たきりになるかもしれない」と言われて、迷い無く決断出来る人がどれほどいるのでしょうか。

説明している医師も助言はしますが、最終決断は家族に委ねます。これまで生活を共にしてきて、どういった関係性だったのか、どういった人生だったのか医師には知る由もありません。医学的な知識や可能性を説明することしか出来ません。

 

 

手術をしたはいいが、良い結果にならなかったとき、予想しない結果となってしまったときとか、本当に自分が行った診療は正しかったのか考えてしまいます。

診療には最善はあっても正解はありません。最善を行っても結果が全てです。

今まで自分の手術で何人もの患者さんを不幸にしてきました。少なくとも脳外科医なら、大なり小なり経験があることだと思います。正解がないからこそ最善を考えて、診療をします。

 

脳外科医は地獄行き。天国には行けないと言っていた上司をなぜか最近良く思い出します。

勤務医と給料について

またまた当直中でヒマなので、勝手に語りたいと思います。

 

今回は勤務医の給料についてです。

一般的に医者の給料は高いと言われています。

確かに高いと思うことは多々あります。

 

研修医の給料が、だいたい500-700万程度です。

それから年次毎に上がっていって、地方病院の部長クラスとなると1500万ぐらいがだいたいの相場でしょうか。ただ、当然ですが、病院によって給料なんて当然違いますし、科によってもそれぞれです。それでも30代で1000万を超える方は勤務医でも多いと思います。

 

それでは、本当に医者の給料はいいんでしょうか。

試しに自分の事例で時給換算をしてみました。

 

脳神経外科は緊急患者をメインにみる科です。時間外での勤務が多いのです。

以前、地方の中核病院に勤めていた時は、月30日中、10日は病院に泊まっていました。

忙しい月は20日以上病院に寝泊まりして、当然下着がないので病院の売店で買ったりとか・・・。正確には記録していませんが、時間外勤務は100時間は普通に超えていたと思います(多分200時間も)。

しかし、時間外の給料は60時間までしか払われませんでした。それ以上はサービス残業です。貰える時間外の給料も微々たるものです。

 

月の労働時間は40時間/週として、時間外150時間/月とすると。

貰える給料が、額面でだいたい70-80万ぐらい。時給換算すると2200-2500円/時間程度となります。

他の職種の方の時給を調べてみると2000-2500円の職種は、看護師さん・製造業の方・郵便局などの方にあたるみたいですね(ネットで調べたのが正しければ)。これを高いか低いか判断するのは、個人的な要因が大きいと思います。

少なくとも自分にとっては好きな仕事をして、並かやや並以上の生活を送れていたので満足でした。

 

ここで、時間外勤務が少ない科ではどうでしょうか。途端に時給が上がります。多分4000-5000円/時間ぐらいになるんじゃないかなと。

さらに科や病院を選ばなければさらに給料は上がります。開業医さんの元で働いたり、美容外科になると2000-3000万は簡単にいくみたいです(そういった方が医者の平均年収を上げているんだと思います)。

 

つまり、忙しい地方の中核病院で働く医者は少ない給料で、自分の寿命を削って働いている一方で、楽な病院でゆっくり勤務している医者はそれ以上の給料を貰っている訳です。後者の医者が悪いと言っている訳ではありません。そういったところに勤務出来るためにはやはりそれなりの経験が必要と思いますし。

ただ、制度的な問題があると思います。市中病院で命を削りながら、急患を診療している医師の方々が報われればと思います。

 

結論としてですが、やはり医者の給料は普通の方と比べると多い方だと思います(たとえ勤務医でも)。ただ、医者の間でも給料格差が著明にあります。さらに問題なのは、楽な仕事、責任のない仕事ほどなぜか高収入になっているということだと思います。

今後そういったところが改善されていけばと思います。

 

ここまで読んで頂きありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。

脳神経外科の外来

脳神経外科の外来について紹介をします。

 

以前にも少し書いたかもしれませんが、脳神経外科は地域や病院によって多少違いますが、脳腫瘍・頭部外傷をメインにみる科です。東海地方は脳出血脳神経外科脳梗塞神経内科が診療する病院が多いようです。

 

 

当たり前ですが、脳神経外科にも外来があります。

どういった患者さんが多いかと言うと、軽度の頭部外傷の患者さんがめちゃめちゃ多いです。

特に多いのが、子供と高齢者の方。子供は学校で、遊んでいて頭部を打撲。その後、学校の先生が(責任を取りたくないので)、病院受診を指示して受診というのが一連の流れです。親も「先生に言われたので来ました」って方が多いですね・・・。

まぁ、小児の場合、心配になるのは人の親として分かりますので、頭部外傷について一般的な説明をして安心させてあげるのも脳外科医の仕事と思っています。

 

次に高齢者の方の転倒も多いです。小児と比べて、無症候性の脳出血を起こす可能性が高く、軽度でも希望があれば精査することが多いです。特に抗凝固薬を飲んでいる方は要注意ですね。

 

あと、多いのは交通事故の方ですね。追突された、した後にむち打ち(頚椎捻挫)から頭痛が発症することがあります。それで心配して受診する方が多いです。

僧帽筋は後頭部まで繋がっているので、それが原因になるんですね。むち打ちについて説明することが多いです。

 

一般の方に知って貰いたいのは、慢性頭痛が原因の脳外科疾患は少ないです。頭痛の原因ははっきりしないことが多く、特に筋緊張性頭痛が一番多いです。慢性頭痛を感じたらゆっくり横になって休んでください。1日もすればほとんどの方が治ります。

ただし!突発頭痛はくも膜下出血の可能性があるため、すぐに病院行った方が良いですね・・・。

 

突発頭痛の見分け方は、「何をしているときに頭痛が起こったのか」が分かる頭痛は突発頭痛です。たとえば、TVで〜〜のCMを見ているときに起きたとか、19時10分とか分単位まで分かるとか・・・。そういったのが突発頭痛ですね。

 

まぁ、ごちゃごちゃ書きましたが、基本的には脳神経外科の外来は、内科の外来と比べてかなり患者数が少ないです。なので、心配だったらとりあえず相談しに受診しに来て頂いて良いと思います。

頭痛や頭部外傷で、偶発的に色々見つかっちゃう方も大勢いらっしゃいますので・・・。

皆様、外来でお待ちしております(当然病院に用事が無いのがベストですが)。