脳神経外科医の生活 A daily life of the neurosurgeon

東海地方在住の脳神経外科医のブログです。I am a neurosurgeon and lives in Tokai region.

研修医の思い出

突然ですが、医龍って漫画読んだことありますか?

医龍の中で、研修医が偶然発砲現場に居合わせて、銃創の緊急処置をするシーンがあります。当然研修医は何も出来ず、上級医が来て適切な処置をするというシーンなんですが、、、。

 

その時の研修医の心理描写として、上級医に処置を任せることにより、自分の手から責任がなくなってホッとしている描写があります。

研修医を経験した人なら誰でも共感できるシーンだと思います。

 

 

自分は、田舎の三次救急病院で研修をしました。

研修医の一番の仕事は、各科をローテートすることでもなく、夜間や休日の救急外来を切り盛りすることです。田舎の病院であるため、研修医も少なく、月に7-10回ぐらい当直をしていました。

 

名目上は、上級医の指導の元で研修医は診察し、検査などを進めるとなっていますが、実際の現場では、ほぼ研修医の独壇場です。

自分で診察し、必要な検査を考え、実施する。その結果に基づいてどういった治療が必要か、明日まで様子を見れるのか、入院して緊急治療が必要なのかを判断します。

当然、最初は過剰検査となってしまったり、判断を間違えたりとトライアンドエラーをしながらERで研修医は成長していきます。

 

自分の研修先は、三次病院であったため、重症患者も運ばれてきました。

何らかの処置をすぐにしないと、数十分のうちに死んでしまうような患者です。そういった患者も研修医のみで対応せざる得ないことはありました。

重症患者を対応中に上級医がきてくれたときは、漫画の研修医のように、自分の手から命の責任が離れ、とてもホッとした覚えがあります。

 

重症患者の対応中は、一人の命が自分の手にかかっている状況となり、めまいに似た怖さをいつも感じていました。自分の次の処置が遅れると、目の前の人は死んでしまうかもしれない。とても恐ろしかったです。

今はもう、医者となって10年近く経ちました。救急当直をしていて、困ることもありませんし、ほとんどの症例に対応出来るようになりました。重症患者の対応についても、怖さは当然ありますが、冷静に対処出来ています。

 

ただ・・・前にも書きましたが、治療にはbetterはあっても正解はありません。

自分の判断が正しかったのかどうか、治療の現場では分かりません。分かるとしても数ヶ月後です。正解のない問題に対して自分なりの答えを出していくのが医療なのかなと思います。